遠い昔の事 その6

グ~キュ~

おなかが鳴って目が覚めた。

頼れるガイドのイさんとの待ち合わせはホテル前に9:00

まだ朝食をとる時間は十分にある。

母はすでに起きていてベッドの端に座っていた。

朝ごはん食べに行こう”と声をかけると

そんなにおなか空いてないんよ”と母が答えた。

昨日から食事なんてほぼ口にしていないし

紙パックのオレンジジュースを飲んでいるところしか見ていない私は不安になった。

じゃー私が買ってくるよ”といい財布と部屋のカギをもって部屋を出た。

たしかフロントの少し横に入ったところにケーキのショウケース

らしきものがあった様に記憶していたのでそこに行ってみた。

ケーキにフルーツタルト、スコーンなどがあり適当に買い求めお会計。

 “マンタニチョンヨン

???

そう私は韓国語がわからない。

マンタニチョンヨン

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うちの家族で韓国語が理解して話せるのは奇しくも父だけ

ヨルブンアンニョハセヨ

朝から上機嫌で韓日辞典を小脇に抱えた父が店に入ってくる。

チョヌンサジャンイダー

誰も意味を教えてとは聞かないので

勝手に説明を始める父。

おはようございます。

私は社長です。

とっとと働け”と心の中で思っていた。

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私が理解していない様子なのを察して

傍らにあった紙にペンで

18000と書いて差し出してくれた。

高っと思ったが日本円で1800円位かと安心する。

そして財布を取り出そうとして気づいた。

日本円しかもっていない。

父の友人に貰ったお金はタクシーと

ホテルに入る前にイさんに連れて行ってもらった

コンビニで使ってしまいもう無い。

財布を開けて確認しても日本の札しか見当たらない。

どうしようかと思っていると

日本円でも構いませんよ”と店員さんが言ってくれた。

そんなこんなで韓国での一人でのお買い物を終え母の待つ部屋に戻った。

紙パックのジュースとフルーツタルトを母に渡し自分もコーヒーとスコーンを食べた。

美味しいね”と母が少し微笑んだ。

その時、私の中に強い決意みたいなものが生まれた。

母と二人ホテルのロビーで待っていると

イさんが“おはようございます”と迎えに来てくれた。

ヨルブンアンニョハセヨ

わたしは意気高らかにタクシーに乗り込んだ。

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